衛星データビジネスを仕掛けるまでの2年間
先週3つの衛星データビジネスををリリースした記念に、JAXA認定ベンチャーのDATAFLUCTのここまでの歴史を記録したい。
- 会社員(日経新聞)をやめた理由
- 人生をかけて勝負するテーマとの出会い
- 独立して稼いだ資金をAll in!
- 仲間との出会い
- 今のDATAFLUCTになるまで
- JAXAベンチャー認定
- DATAFLUCT discovery.
- DATAFLUCT agri.
- DATAFLUCT aline.
- 2020年の展開
1.会社員(日経新聞)をやめた理由
約2年前、2018年3月の時点で私は日本経済新聞社の正社員で日経IDの新規事業を作る担当だった。その会社に入る時にこれが最後の会社員にしようと考えた。これまでずっとデジタルで新規事業を作り続けてきて、最後は、「伝統的な組織でデジタルで新規事業をする意味」について考えたかった。当時は、転職活動4回目だったせいもあり、1ヶ月で10本の内定を手に入れた。役員オファーのものもある中で、唯一、ノータイトルの平社員が日経新聞だった。最初にエントリーして、一番最後に内定をもらった会社だ。マスコミの中では給与が高い方だが、完全年功序列なのでそれほどでもない。年収を下げてまで経験したかったものを手に入れたかったからだ。これを選ぶのが一番おもろい人生になる。
入社後、新規事業アイデアを60本考え、15本役員にピッチして、4本に予算がついて具体的に前に進んだ。私としては最低でも10本通したかった。新規事業を潰すすべての理由は、中間管理職と意思決定者の役員にある。「あと数年で定年を迎える60手前の役員になぜ今、新しいチャレンジができようか」創業者しか本当の意思決定はできないだろうな、改めて構造を理解した。ましてや、日経電子版は会員を増やし続け絶好調だ。
私が提案したのは5年後にくるかもしれない世界で角度が高いものばかりだった。日経IDの基盤を使ったら、そりゃ勝てるわな。っていうテーマばかりのものだった。結局前に進むのは、教育やキャリアというテーマに近いもので、2年前に、ブロックチェーン、D2C、シェアリング、MaaS、信用経済、データビジネス、ミレ二アル向けサービス、なんてものは全く理解されなかっただろう。その後の世界がやってきたのは言うまでもない。
唯一、日経コインという仮想通貨のアイデアだけは、確かにやるべきじゃなかったのかもなぁ(笑)ヘルスケアデータビジネスの承認が降りなかったタイミングで「じゃ自分でやるよ」ってシラを切って辞めることにした。(ヘルスケアビジネスは生涯やり続けるテーマの一つ)
2.人生をかけて勝負するテーマとの出会い
将来、何をするか決めていなかった。ヘルスケアで勝負するのは資本を作ってからだ。せっかく独立するなら、コンサルとか、受託開発とかで生きていくのではなくて、大きなテーマを見つけてチャレンジしたい。
「新規事業の会」みたい飲み会に誘われ、そこにJAXAの人が隣に座っていて、「JAXAで働かないか?非常勤職員で」という話があり、面白そうだなぁって思った。
宇宙ビジネスか。考えたこともないや。
ちょうどその時に「Orbital Insight」という衛星データを活用したビジネスをやっている会社を知った。
その時に出会った記事がこちら。
このサイトは宇宙ビジネスについて最もまとめられているメディアでこれを読めば読むほど、私の居場所は、衛星データビジネスだと思うようになった。これは、おもろいぞ。
衛星データは、思った以上にマネタイズがされていないデータ。
しかも、めっちゃくちゃ技術も必要。そして、ビジネスモデルもめっちゃ難しい。衛星データ活用ビジネスで、世界で知られているのは、数社程度であり、歴史があるテーマは「農業」だった。農業以外にも、都市開発、水産業、林業、金融、小売、保険と幅広い活用チャンスがあると思った。
好奇心旺盛なタイプなので、やったことがない真逆の方向に行きたい。
「知らないこと(宇宙や衛星データのこと)」×「知らないこと(解決すべきテーマ:都市開発や農業や金融など)」でどんどん新規事業をつくれたら5年くらいは飽きないだろうなあ。これは私が登るべき頂かもしれない。
改めて人生のテーマを決める意思決定の基準は、ここまで緩いものか・・・。
心から解決したいテーマで起業すべきかもしれないが、私の場合は、新規事業自体が大好きで、さらに、誰も解決したことがないテーマや技術にチャレンジするとということが好きである。
衛星データビジネスをやりたいのもただ面白そうだから。
好きでないものを仕事にすると、ものすごく時間が長く感じるし、肩も凝るし、そもそも、やる気も出ない。だから好きな仕事しかしない。
そうするとすべてうまくいく。
テーマを決めるのはそれくらいカジュアルだった。
好きだから、面白そうだからでいい。
3.独立して稼いだ資金をAll in!
独立しようと思った時に、日経の新規事業のテーマで副業事業のインタビューをたくさんしたので、どのようにすれば、自分の年収を超えられるかはイメージがついた。先輩たちにお金をはらってインタビューしまくっていろんな稼ぎ方を知った。
実際やってみたら1年目は4–5000万円は稼げた。稼ぎながら、公庫から500万円借りて、銀行から1000万円を借りて、すべての資金を、新規事業に、M&Aに、AR/MRに、衛星データビジネスにALLINした。
2018年8月に検討を開始して、2019年10月にリリースした最初のサービスが、DATAFLUCT marketing.だ。
https://marketing.datafluct.com/dashboard/
衛星データを使って不動産テックをやろう、見たなノリで検討して、結局ヒアリングしまくった結果、衛星画像は使わずに、「位置情報」や「基地局情報」を分析して、不動産の価値を算定しようという流れになった。
ユースケースとして、飲食店や小売店など商圏分析のPAINを分析しまくった結果、売上推定をするサービスを作った。
この時の自腹が約1000万円。
数々の失敗の上に、このサービスがあるのだが、そのビジネスモデルの真の狙いは誰にもVCにも伝えていない。これからの展開を楽しみにしていて欲しい。
(ちなみに、稼いでAll Inするビジネスモデルで、今、自分自身がオーナーの新規事業は18本(うち、DATAFLUCTが13本)ある。会社員でそんなことはできない。)
4.仲間との出会い
衛星データビジネスで起業するならどうする?どうやって仲間を集める?実は、私が日経新聞の時に作っていた事業が、「仲間集めサービス」「ビジネスマッチングサービス」だった。Yentaのようなものであり、副業マッチングサービスのようなものであり、eiiconのようなものでもあり、TEAMKITのようなサービスでもある。
価値がある人の出会いにこそ、独立してすべての時間を注いでいる。
新規事業なんてピボットしまくりで、その数々の方向転換をついてきてくれる人、耐えられる人、立ち向かえる人は、1000人に1人くらいしかいない。様々な方法で仲間を集めた。
リクルートの時に一緒に働いていた人、たまたまランチした元リクの友達に「こんど衛星データビジネスやりたいから、宇宙に興味があって新規事業やりたい人紹介して!」っていう具合に。
それで2018年8月に独立した月に、キックオフをした。
7,8人くらいの男しかいない組織で、ボランティアでみんなに参加してもらった。そのうち半分がいなくなったが、その当時からいるメンバーを最も大切にしているのは言うまでもない。
参考までに、その時の仮説は次の通りだった。
5.DATAFLUCTになるまで
今のDATAFLUCTは、上記の範疇ではない。
衛星データを使うビジネスだけではなく、「POS」「プローブデータ」「IoT」など幅広くデータを扱う会社になった。
当初の思いは、「衛星データを商いに。」だった。
それは今でも変わっていない。その頂に登る前に、そもそも、「小売店」「不動産」「サービス業」「観光業」どこを切り取っても、「あれ?全然データを使えていなくない?」っていうレベルだった。
衛星データのまえに、「データを商いに。」だろう。
今、多くの企業のバズワード「DX」をやろうとしている。そもそも、DWHは構築したことあるのか。使い倒しているのか?そして、プライベートなDMPが必要になるだろう。機械学習やディープラーニングを本気でやるなら「データレイク」が必要になるだろう。その精度を高めたいのなら「外部データ」が必要になるだろう。その時に最初に選ばれるパートナーになれば「衛星データビジネスが事業化できた時に、№1を取れる。」そう考え、今のDATAFLUCTのコンセプトが出来上がった。
参考:データレイク
https://aws.amazon.com/jp/big-data/datalakes-and-analytics/what-is-a-data-lake/
この時点で、自ずと、目の前の課題を解決する会社ではなく、未来の課題を解決する会社として位置付けられた。衛星データを活用するのは自ずと、業界でトップクラスのデータ活用企業であるに違いない。
もし「データレイク」の構築が終わっていて、データ活用ができていないなのなら、DATAFLUCTが解決できる。DATAFLUCTでは「DX」とならんで「データレイク」の構築もビジネスの一つのテーマになった。それが衛星データを商いにしていくための着実なステップになる。
今のDATAFLUCTのビジネスの主軸は、「DX(共創事業開発)」「DATALAKE(データ基盤開発)」「SaaS(顧客課題解決)」。顧客からは一桁数字が違うね。早いね。って喜ばれている。
日に日に、うちのデータレイクは太り続けている。大きなクライアントのデータをうちのAWSとかAZUREで保管するのは責任を感じると同時に、信頼を獲得できている企業なんだと思う。同じ規模の数千万円の資本金の会社でも、位置情報、天気、個人情報、カメラの情報、衛星画像、基地局情報、などのデータを持っていない(はず)
3年も経てば、非構造化データを活用した予測・最適化のアルゴリズムを作る、世界1の会社になれると思う。今の規模でも3年後には100本のオリジナルアルゴリズムが作れる見立てだ。
6.JAXAベンチャー認定
独立してDATAFLUCTはJAXAベンチャー認定を受けた。
https://aerospacebiz.jaxa.jp/venture/datafluct/
上記の情報は、10ヶ月前のもので古い。。。
JAXAベンチャーとはJAXAの職員が起業する際に、自分で出資している場合にJAXAの知財やノウハウを活用できる、ベンチャー制度のこと。出資関係にあるものではない。ちゃんと契約書もあって、JAXAの知財を活用するように努力しないといけない。
現時点で、JAXAの知財は全く使っていない。今後、ALOS2,3,4、GOSAT1,2あたりの衛星データを使ってサービス開発をバンバンやっていくつもり。
衛星データ解析チームはインターン生とか募集始めたので、興味がある人はぜひきて欲しい。うちにはめっちゃデータあるから。
7.DATAFLUCT discovery.
DATAFLUCTでフラグシップサービスを作ろうと思った。
このサービスは、digital globeなどの高精細な衛星データから対象物を瞬時に検出できる、または、対象エリアの中の対象物の数を数えられること、または、経年変化を追えること。これを高速で実現できる仕組みをソフトウェアで開発した。
技術レベルはめっちゃすごい。
DATAFLUCT discovery.の技術紹介はこちら
ユースケースは、「世界経済のリカバリーモニタリング」
経済活動を代表的に説明できる衛星画像を買い続けて、そこの変化を追い続けて、経済指標を予測する仕組みとして使おうとしている。具体的にどんな指標をおいかけようとしているのか、誰に売ろうとしているのは言えない。
実際に使ってみて。アクセスはこちら
これはあくまでDemoなので、実際のビジネスモデルは、その企業が知りたい情報をレポートする仕組みで、衛星データとディープラーニングを使ったデータブローカーだ。
8.DATAFLUCT agri.
続いて仕込んだのは、「農業」。
穀物や農作物の収穫予測。
世界的に見れば、衛星データ活用事業で最も大きな産業の一つだ。
穀物メジャー世界一位の「カーギル」は人工衛星を活用しているという。上場していない家族経営なので、その秘密はいろいろあるのだが、人工衛星を打ち上げて、収穫予測をしているのは有名な話だ。
DATAFLUCTでは、手始めに「野菜」から攻めることにした。
なぜって、それはとても身近な社会的課題だからだ。
相次ぐ異常気象は経済へのマイナス効果を与えている。キャベツなどの野菜高騰は続き、家計を直撃しつづけている。キャベツの値段が2、3倍になることで何が問題なのか。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/234429
農業従事者が辞めてしまうということだ。昨今の異常気象によって、野菜の価格変動は激しい。大量に作ったら買い叩かれ、台風が来たらまったく儲からない。農家って厳しい。
これは気象、価格予測、衛星という合わせ技が使えるDATAFLUCTだからこそ挑むテーマだと思った。
■DATAFLUCT agri.デモ動画
PR内容
この事業には事業責任者のいろんな思いが詰まっているので、ぜひ応援して欲しい。
9.DATAFLUCT aline.
衛星データの使い道で、既存産業に近いものが、都市開発だ。衛星データ解析によって建物面積を検出し、高速描画しているのが、このサービス。
https://datafluct.com/news/476/
都市の社会的な課題は明らかにしていくこのサービスは、データによるジャーナリズムに近いし、PDCAが回せるプラットフォームともいえる。
実際に使ってもらった方が早い。
データレイクを活用した街同士の比較はあらゆる社会的価値観を変えていくだろう。
今回は
「無作為に人口がそれほど増えていないにもかかわらず、無作為に建物をたてまくっているのはどこか?」
を明らかにした。
次は、
「温室効果ガスを出しているのはどこか?」
「災害リスクが高いエリアはどこか?」
「耕作放棄されているのはどこか?」
を明らかにしていく。
このデータプラットフォームは、スマートシティに進むためのデータ基盤になる。
10.2020年の展開
今まさに、新型コロナウィルスとともにどう生きるのか、を考えなければならない。DATAFLUCTだけでも数十の領域を攻めているので、そのポートフォリオをどう組むか日々考えている。
私たちは、自分で稼げる会社である。
1年ちょっとで10本の新規事業のデータサイエンスSaaSを作れる会社は、日本では唯一だろう。
DXやデータサイエンスで受託開発案件は日々舞い込んでくる。
着実に知財とデータをためながら、社会の課題を解決するビジネスを展開していくので、ぜひ応援して欲しい。
■DATAFLUCT マテリアリティ(重要課題)
DATAFLUCTはデータとサイエンスの力で事業を通じて社会的課題を解決することを目指している。
1.データ活用をすべての産業に
DATAFLUCT service platform./dataplatform./DX studio
DATAFLUCT pricing.(未発表)//DATAFLUCT search-insight.(未発表)
2.持続可能なサプライチェーンの実現
DATAFLUCT foodloss./DATAFLUCT agri.
3.低炭素社会に向けた都市課題の解決
DATAFLUCT aline./DATAFLUCT mobility.
4.データによる自然環境の保全・監視
DATAFLUCT discovery./DATAFLUCT forest.(未発表)/DATAFLUCT aline.
5.サービス業の「はたらく」を魅力的に
DATAFLUCT intelligent./DATAFLUCT marketing./DATAFLUCT order.(未発表
6.経済活動における情報格差の解消
DATAFLUCT financial./DATAFLUCT real-estate.(未発表)/DATAFLUCT search-insight.(未発表)
2年前に2030年に衛星データ活用事業でグローバルNo.1を目指そうと思って起業して、ここまではまずまずの出来。
解決すべき社会的な課題は思った以上に多い。
データと、サイエンスの力を信じて、
顧客の課題ドリブンで、
ソフトウェアサービスを開発し続ける。
次から次へと社会的な課題を解決する。
それをやり続けた結果、事業もNo.1だったらいいなぁ。
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今も2年前も変わらず、一番時間を使っているのは、仲間探しである。
その人が見つけてくれるために、ここまでの衛星データビジネスを振り返ってみた。